手書きで作図をするか迷っていませんか?
この記事では建築施工図を、一部だけでも手書きで作図した時のメリットとデメリットを書いていきたいと思います。
先に言っておきますが、手書きをオススメしたいというワケではありません。
作図の効率でいうと圧倒的にAutoCADの方が優れていることは間違いありません。
とはいえ昨今の施工図はCADを使って書くことがほとんどですが、一昔前は手書きの図面しかありませんでした。

ちなみに私が働き始めた頃にはすでにCADに置き換わっていました。
それでも、昔から施工図を書いていて、CADの使用を諦めて手書きで作図する図面屋さんもごく少数ながらおられます。
また、図面の全てではなく詳細図など一部だけを手書きで書く方は、クオリティの高低は別にしても多くはないですがそれなりにおられます。
また、現場などで急に納まりなどを説明したい時や、図にして説明したいけど、紙とペンしかない時などは手書きでサラサラと書けた方が重宝します。

CADの便利さを知ってしまうと、手書きなんてデメリットしかないのでは?
と思ってしまいますよね
そこで、手書きにはデメリットだけじゃなくメリットもあるよということを書いていきます。
デメリットもちゃんとお伝えします。

手書きの上手い・下手のポイント

手書きであればなんでもいいというわけではありません。
書きなぐったようなスケッチでは、見せられた相手や後で自分で見る時も「???」となってしまいます。

手書きだけに限らず図面というものは、見やすく内容が正確に伝わるものが理想だと思っています。
そのためにも上手い・下手のポイントとして以下の項目に注意すれば、図面が見やすくなります。
線の平行直角
当たり前ですが、平行直角であるべき線は平行直角で書くべきです。
また線自体を波打つように書くテクニックもありますが、全体としてみた時には平行直角にします。
平行直角をおろそかにすると極端な話ですが、スラブ天端の線が斜めになっていた場合天端フラットで書いているつもりなのに、勾配が付いていると間違った意味で解釈される可能性もあります。
そのためにも机上でスケッチを書く場合は方眼紙や方眼トレぺを使うと書きやすくなります。
Amazonでも販売されています。
スケール感
AutoCADでも縮尺という概念があるのと同じで、手書きでも同様です。
手書きだから「適当でいいか」ではなく手書きでもきっちり縮尺を計算して書きましょう。
三角スケールを使えば、ほとんど計算しなくても作図できます。

慣れてくると、フリーハンドでもほぼ縮尺通りに書けるようになってきます。
縮尺を適当に書いていたら納まらなかったけど、ちゃんと縮尺を合わせて書いたら納まったということもあるのでスケール感は大切です。
線の太さ
AutoCADでも印刷時にペン設定があるように手書きでも線の太さを使い分けると見やすい図面になります。(そもそも線の太さの使い分けは手書き図面が先ですが。)
例)躯体線・・・太く
寸法、寸法線・・・細く 等
文字のサイズ
寸法などの文字の大きさにも気を付けると見やすくなります。
大きすぎても、小さすぎてもダメでバランス良く具体的には高さ3〜5mmぐらいがベストかと思います。(図面名やタイトルなどは別)
また、文字がキレイで見やすいことが理想的ですが、少なくとも読める字にしましょう。
キレイに見えるコツとして文字の下端が平行に揃えるだけでも変わります。
情報の豊富さ正確さ
AutoCADやjwcad等のCADをメインで作図している場合、手書きで書く図面の多くは詳細図になると思います。

実際、私も手書きでは詳細図ばかり書いていました。
つまり、詳細図を書くということは必要な情報がしっかり入っていないといけないので情報の豊富さや正確さが重要になります。
各要素の統一感
線の太さや質感、文字のサイズ、スケール感などどの要素もそれぞれ統一して書くと上手く見えます。
手書き作図のメリット

一目おかれる
あくまでもあなたの手書き作図が上手な場合です。
それはフリーハンドでも定規を使ってもどちらでも大丈夫です。
なぜならフリーハンドが上手だと”味がある、建築の経験が長そうだな”と思われることが多いためです。
ただし、フリーハンドだったらなんでも味があると勘違いしてはいけません。
現場などで急いでいる時は当然下手になってしまいますが、それはそういう状況なので「伝達の速さ」を優先することが一番で、伝われば良いというスケッチで大丈夫です。
ただ机上で時間をかけて手書きで書いたものが低いクオリティなのに「手書きですごいだろ」という姿勢でいると恥ずかしいだけなので気を付けましょう。
逆に定規を使った手書きの場合は見やすさは問題になることは少ないと思いますし、なにより「キッチリしているな」と思われることが多いです。
あなたの記憶に残りやすい
手書きで書くということは、それぞれの寸法を確認しながら書くことが多くなるので記憶に残りやすいです。
また、試験勉強などでも書いて覚えるように図面も寸法などを書くことで数字を覚えやすくなります。
現場事務所などで生産設計として図面を書いていると、現場監督や作業員の人たちから「あそこの寸法いくらだった?」などと聞かれることは日常茶飯事です。
その時、「ちょっと待ってください」とゴソゴソ図面を出したりしているとお互いの時間がもったいないですし、あなたはまだしも相手を待たせるということはできるだけ避けたいものです。
なので、覚えられる寸法、納まり、材料などはできるだけ覚えておきたいので手書きで図面を書くことは覚えるための有効な手段の1つです。
ただし、覚えるために何でもかんでも手書きで作図すると本末転倒、時間の無駄なので、納まりが難しい部分や重要な部分だけ手書きにすることが多いです。
計算力が上がる
AutoCADで図面を書くと寸法などは自動で出てくるのであまり計算をすることは少なくなります。
手書きの場合はそういうわけにもいかないので、その都度計算機をたたくか暗算をすることになるので計算力が上がることにつながります。
閃きやすい
個人差はあると思いますが、AutoCADで作図しているより手書きで作図している時の方が難しい納まりに対して解決方法を閃きやすかったりします。

単に難しい納まりを考える時は手書きが多いというだけかもしれませんが。。。
間違いに気付きやすい
特に寸法についてですが、AutoCADで作図する場合、寸法記入は自動でできるため間違っていても気づきにくいというデメリットがあります。
逆に手書きの場合は、その都度考えて計算して書くので間違いにくい、間違っていても気付きやすいということがあります。
建築士試験のトレーニングになる
あなたが建築士を目指している場合はこのメリットが一番大きいかもしれません。
1級・2級建築士ともに1次試験は学科ですが、2次試験は製図になります。
当然ながら全て手書きで書く必要があるので普段から手書きに慣れておくことで、建築士試験の時に苦手意識がなくなります。
普段AutoCADだけで、全く手書きで線を引いていないと試験対策の前に手書きに慣れることで余計なつまずきが発生してしまいます。

実際に私も1級建築士免許を取得しましたが、普段から手書きで書いていたことで製図の試験勉強の時もすんなり入れました。それだけでも精神的にアドバンテージがありました。
プレゼンのように使えて説得しやすい
ある程度建築に理解や知識のある相手だと、上手な手書き図面を元に打ち合わせなどをすると効果的です。
手書き=昔から図面を書いている=経験がある という方程式が成り立つので
特に、相手があなたの事を知らない場合、手書き図面を見せるだけであなたに対して「この人はある程度建築分かっているな」という目で見られることが多いです。
手書き作図のデメリット

CADに利用したい場合、2度手間になる
CADに利用したい場合、CAD上で再度作図する必要があり2度手間になるので、手書きする前によく考えます。
「この部分はあとでCAD上で使うのではないか?」
「使うのであれば、手書きでなくてもCAD上でなんとか考えられるのではないか?」
「CAD上で使うけれど、それでも手書きで書きたいし考えたい。」
というようによく考えてみて下さい。
手書きで書き始めたけど、だいぶ書き進めてから、「やっぱりCADの方が効率的だしCAD上でも考えられる」となってしまう時ほど無駄なことはありません。
少しだけ修正したい時でも時間がかかる場合がある
少しだけ修正したい時、CADであればストレッチや移動コマンドで一瞬でできる事ができないということがあります。
手書きでも消して書き直せばすぐに直せることもありますが、線をずらすだけでも場合によっては寸法の数字だけ直すなど図面としてあまり良くない状態になることもあります。
それを避けようとすると、直す量が多くなり時間がかかるということになります。
まわりに手書きする人がいなくて、手書きを否定された時の対処

あなたが手書きで作図したくても、まわりに手書き反対派の人がいたり、特にその人が上司や先輩だったら厄介ですよね。
あなたが手書きで書いていると、おそらくこう言われるでしょう。
「時間の無駄だから、CADで書きなさい」と。
確かにその指示はもっともです。
でもあなたにも手書きで書きたい理由があるはずです。
例えば、、、
- 手書きの方が考えられる
- 絵や図面を手書きするのが好き
- CADに慣れていないので手書きの方が早い
- 建築士試験の勉強を兼ねている
- 一目置かれたい
- 時間に余裕がある
- プレゼンのように使いたい
上に挙げた中で主張する時に気を付けた方がいい項目が「建築士試験の勉強を兼ねている」です。
あなたが勤めている会社が建築士免許の取得を強制していたり、設計事務所を営んでいたりするばあいは別ですが、そうでない場合、「仕事中に関係ないことするな」などと言われるのがオチです。
個人的には上記の中でまだ納得される可能性の高い理由は「手書きの方が考えられる」かなと思います。
まとめ
あなたが時間に余裕があるのであれば、手書きで作図することは無駄にはなりません。
まわりに手書きする人がいなくてあなただけだと、まわりの目が痛いかもしれません。
あなたが手書きで作図するか迷っているなら、今回挙げたメリット・デメリットを見比べて、できるだけ無駄にならないようにしてもらえればと思います。
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